やっぱり自分は、八戒という男が苦手だ。デスクの前に腰掛けてキーボードの上に指を滑らせるのを見つめながら、じっとその横に立ち尽くした。銀縁の細い眼鏡に覆われた容姿は冷たくも鋭くもある。しかし以前、他の女子社員と話しているのを見た時には、別人かと思うくらいににこやかで温厚そうな男に化けていた。そしてその完璧な変わり振りに思わずぞっとしたものだった。その証拠に今の彼はこれだ。一欠片ほどの愛想も可愛げも見せずに、それどころか視線の一つもこちらにくれはしない。これは無愛想どころの問題ではない。
 そもそも今日は彼が自分を呼び出したのではなかったか。もしかしてこのまま立たせておくためだけに呼び出されたのだろうか。だとしたら相当質の悪い嫌がらせだ。それでも屈することだけは決してプライドが許さない捲簾は、彼のデスクの横に立ったままじっとその指の動きを見つめていた。すると、指の動きは止めないまでも彼は少しだけ口を開いた。視線もまた、パソコンに向かったままだ。
「新刊の売り上げは上々だそうです。彼をやる気にさせてくれてありがとうございました」
「いや……別に俺は何も……」
「彼、珍しく楽しかったって言ってたそうですよ。あなたのおかげでしょうか」
「や、そんなことは」
「随分と懐かれましたね。……気になりますか、彼が」
 八戒はそう言って薄く笑い、キーボードを打つ手を止めた。そして顔をやっと捲簾の方へ向ける。その目は何ともいえない表情が滲み出ていた。どんな種類のそれかは分からなかったが、それが確かにマイナスの感情であることはすぐに分かった。そしてそれが、嫌悪というカテゴリに当て嵌まるであろうことも。彼は自分を嫌っている。悟浄の言った通りだ。笑いたくなったが、そんなことをしたら彼がどんな顔をするかと思うと、それは押し殺すしかなかった。そして捲簾は何とか無感情を装ってゆっくり口を開いた。あからさまに向けられた敵意は相当なものだ。つい先日会ったばかりの人間にそこまでの不の感情を向ける理由は一体何なのだろう。
「……どういう意味ですか?」
 そう言うと、頬杖をついた彼は何もかも見透かしたような目で捲簾を見上げ、皮肉に笑ってみせた。その視線が不快で目を眇める。
「彼は男でも女でもいい人ですからね」
 下世話な、と無意識の内に顔を顰めた。確かに彼の傍にいて、それ、もといそれに付随するような感情を覚えないかと言われたら言葉に詰まるだろう。しかしその感情を抑えてただ穏やかに過ごしたい今、そういった下世話な言葉は不快だった。今の彼との曖昧な関係を汚いものと決め付けられた気がしたのだ。まだ形も定まっていないその関係を無理矢理型に嵌められたようで。
「気を悪くしましたか」
「悪くしないと思いますか」
 だと思うなら彼は多少人付き合いに障害があるのではないかと思ってしまう。しかしそう思うと同時に、彼はそんなタイプとは正反対に思えた。それどころか、酷く相手の感情の動きに聡い男だと。そんな風に思っていると、八戒は口元を僅かに歪めて冷たく笑い、捲簾を見上げた。そして「ねぇ捲簾さん」、と笑って言い、ふっと表情を無くした。
「僕はあなたが嫌いです」
 分かっている。その言葉よりももっと饒舌な目から、その感情が滲み出しているからだ。
「……奇遇ですね。俺もです」


「……お前、何でああ捲簾のこと嫌うの?」
 捲簾が帰った後、ひょっこり現れた悟浄はそう言って呆れた顔をした。そんな悟浄に、八戒は僅かに拗ねたように唇を曲げて視線を逸らす。それは捲簾のいる前では全く見せない、幼く人間らしい表情だった。
「あいつが天蓬と仲良くするのが面白くないんだろ? じゃあお前も仲良くすりゃいいんだ。どうしてそれが出来ない?」
 悟浄にそう言われると、叱られた子供のようにふくれて顔を背けた。そんな八戒に悟浄は溜息を吐く。彼は頭がいいくせにどうもこういった自分の感情に関することには疎いのだ。理性的であるがゆえに、抑えなくてもいい感情まで押さえ込んで溜め込み、結果的に自分の身体の中で腐らせてしまう。そうやって今までにも何度も身体の調子を崩しているのだ。
「お前が何か考えを持っててそうしてるのは分かるんだけど。今のままじゃお前も……天蓬にも良くないと思うぞ」
 何の事情も知らない天蓬が、いつもああして八戒に冷たく接されているのを見るのは悟浄も辛かった。今では天蓬もそんな八戒に諦めを見せるようになってしまっていた。冷たくされても、素っ気なくされても、叱咤されても、それが彼の自分への感情なのだと変に納得してしまったかのような彼の様子に、見ている方も苦しい気分になるのだった。そして何を考えてそんなことをするのか分からない親友に対しても、言いようのない呆れが生まれる。
「……だって」
「何?」
「天蓬、は……」
「何よ」
 そこまで言って、八戒は少し苦しそうな顔をして口を噤んでしまった。そんな友人の姿に悟浄も言葉に詰まる。腹の底まで真っ白な男ではない。しかし彼は考えなしに相手に嫌がらせをするような男でもなかった。それが分かっているからこそ頭ごなしには責められない。俯いてしまった彼の頭を見下ろして、小さく彼に気付かれないよう溜息を吐く。
「嫌いじゃないんだろ、天蓬のことは」
「……はい」
「何か事情があるんだよな」
「はい」
 手を組んで俯く彼の旋毛を見つめて話し掛け続ける。
「いつかちゃんと解決しろよ。俺ならいつでも手を貸すから」
 そう言うと、八戒は少しだけちらりと視線を悟浄に向けて、微かに微笑んだ。それは本当に綺麗なもので、少しだけほっとする。悟浄は彼の頭に手を伸ばし、その濃茶の髪の毛をがしがしと撫でてやった。


 そして、室内の電気を低くした、たった一人しかいない編集室の中。夜は更けて短針も上へと向かってぐんぐんせり上がっていく。悟浄ももう帰り、今日も一人残業をこなしていた八戒は、携帯電話に耳を押し当てて目をそっと瞑っていた。耳に届く柔らかい声に緩く息を吐く。耳元で小さく鼓動が響いていた。それを、静かに深く呼吸をして鎮めようとする。
『……じゃあ、その件もお断りして頂けますか』
「分かりました。そのように」
 昨今流行している漫画や小説の映画・ドラマ化という流れで、早速天蓬の小説にもそういった依頼が来るようになっていた。しかし天蓬はそういったことを嫌い、いつもそれを断っていた。映画化もドラマ化も漫画化も、彼は何も望まなかったのだ。自分の生み出した文を別の誰かに多少なりともアレンジされ、ニュアンスを取り違えられるということが耐えられないのだろう。上の人間たちは利益をアップさせるため、その依頼を受けたいと思っているようだった。しかし八戒は天蓬の意を汲んで、それだけは頑として許さなかった。八戒は時折天蓬に冷たく辛く当たるものの、他が天蓬に何らかの影響を与えることは許さなかった。それは良い影響でも、悪い影響でもである。その影響の一つが、あの捲簾という男だった。あの男が天蓬を変えていきそうで、怖かったのだ。
「……どうしてなのか、訊いてもいいですか」
 今まで訊いたことのなかったその疑問を初めて口にしてみる。すると、電話の向こうの彼は急に少し黙り込んだ。電話の向こうの彼の空気が少し硬くなった気がした。その気配を探って、八戒はじっと目を瞑って耳を研ぎ澄ませた。
『……もし三次元化するとしたら、キャストにも演出にも、僕はとことん我侭になってしまいます。それは許されないし、面倒でしょう』
「……」
『それとも、僕の文は映像化しなければならないほど、解り難いでしょうか』
 彼の声が僅かに沈んでいる。彼はプライドの高い人だから、それを指摘することは出来なかった。しかし彼が今酷くプライドを傷つけられているのは事実だった。八戒は携帯電話の縁を指でなぞり、デスクの上のパソコンの明かりを見つめる。目が痛い。何だか無性に喉が渇いた。舌ですっかり乾いてしまった唇を舐める。歯痒かった。傍にいて、もう少し言葉が上手だったなら、彼を力づけてやれるのに。フロアと、電話の向こう側に広がる沈黙に、息の音を立てることすら躊躇われた。
「あなたが悪いんじゃありません」
 思った以上に優しい声が出てしまった。電話の向こうの彼が驚いたように僅かに息を呑んだのが分かった。しまったと八戒は小さく唇を噛む。しかし今更引っ込みが付かなくて、そのまま彼に発言する間を許さず一気にまくし立てた。
「流行なんですよ。話題性のあるあなたの作品を映像化すれば何らかの利益が発生するのは必至だから、それだけです。あなたの作品は、映像でなければ理解出来ないというような能のない者に読ませる必要はありません」
『……八戒』
「では次の依頼はメールでします。何かあったら電話を下さい」
『あ。あの』
「……何ですか」
 今この時に引き止めないで欲しい、と思いながらも渋々聞き返すと、電話の向こうの彼は少し間を置いてから言った。
『僕に言えたことではないですが、根の詰め過ぎはよくありませんから。睡眠と食事を欠かさないで下さい。……それじゃ』
 そう一気に言って、一方的に電話は切れた。通話の切れた音が耳に響くのを、暫く八戒は電話を耳に当てたまま黙って聞いていた。そして漸く携帯電話を耳から離し、通話を切って、二つに閉じた。握った手が微かに、震えている。
 フロアにはパソコンの動く音だけが部屋に響いていた。窓の外は華やかなネオン。手の平の中には未だ僅かに熱を持った携帯電話。


++++


「食べてるか?」
「いえ、あまり」
 それが、週末彼の家を訪れてまず初めに訊ねることだった。しかし返ってくる言葉もいつも同じで、その度捲簾は怒ることも忘れて、力が抜けたように笑ってしまうのだった。彼の“あまり”は、捲簾や世間一般にとっての“全然”に等しい。そして彼にとっては久しぶりであろうまともな食事を作って出してやる。そして、いただきますと一言告げてから、彼がきちんと箸を取るのを見てやっと息を吐くのである。もそもそと食事をするのを見つめて、手元に置いた自分のカップの縁を指先でなぞった。
「次もやる気になったんだって?」
「ええまぁ……うまくいくとは限りませんけどね」
「……お前の言う“うまくいく”って、何なの」
 皿に箸を伸ばし掛けた彼は、捲簾の問い掛けにその箸の先を止める。そしてぱちぱちと目を瞬かせ、さらりと答えた。
「売れ行きがいいこと」
「……苦しくねぇか」
 彼の返事に一瞬捲簾は驚いた。それに、そんなに金に執着するのは彼らしくない。彼とそう長く一緒にいるわけでも、彼のことを知り尽くしているわけでもないのにそう思えてしまった。すると野菜炒めを箸で摘んでいた彼は、顔を上げないままに小さく笑った。
「苦しいですよ。こんな風に売上至上にはなりたくなかった。だからね、そろそろ辞めようかと思っていたんです」
 そんな風に言って、彼は何事もなかったかのようにそのまま食事を続けている。一瞬ドキリとさせられた捲簾は一人、その不快な鼓動と共に取り残された。そして何でもないような顔をして味噌汁の椀を冷ましている彼を見る。
「……辞める?」
「ええ。出版社から馬車馬みたいに尻叩かれてもっと稼げって急っつかれて。そんな状態に嫌気が差して、もう消えてやるって思ってました。あなたと初めて会ったあの日も、友人と会ってその話をしてたんです。……本当はあの時スランプ中だったんです、そんなこと言える御大層な立場でもないですが」
 彼が箸を置いて湯飲みを手の平に包み込む。僅かに緑茶の香りがして、息を吹きかけて茶を冷ます音だけが部屋に響いた。
「だけど、もう一度やってみるのも悪くないかと思ったんです。……あなたに会ったからですよ」
 そう言って、彼は湯飲みを両手で包み込んだまま笑った。その言葉にか、表情にか、何だか急に耳が熱くなった気がして唐突に席を立つ。そして空になったカップを持ってキッチンへ向かった。最後に見た彼はまだ、楽しそうに笑っていた。からかわれているのかもしれない。しかしそうだとしても何だか不思議と嬉しくて、笑いそうになってしまう。それを無理に堪えようとしておかしな表情になった。シンクに手を掛け、項垂れて無意味に唸り声を漏らす。当分彼のところに戻れそうにない。
 しかし数分後、すっかり食べ終わったらしい彼が危なげな手つきで食器を運んできたのを見て、慌てて手を貸すことになった。その時、ちらりと彼の目が自分の目を覗き込んで笑ったのが見えた。それにますます恥ずかしくなる。彼のとろりと濃いカラメル色の眸が楽しげに細められて、全て見透かしたように微笑んだ。
「嘘じゃないです」
「……からかってんな」
「からかってませんってば」
 居たたまれなくなって彼から食器を奪い素っ気なくシンクに向かう。それでも、彼はそのままついてきた。そして並んでシンクの前に立ち、捲簾の顔を覗き込んできた。そして猫のように僅かに身を寄せてくるのにますます鼓動が速くなる。努めて彼の熱を感じないように、彼を見ないようにと視線を下に落としてスポンジに洗剤をつけた。その横で、彼が苦しげに瞼を伏せていたのにも、気付かなかった。
「……八戒に怒られませんでした?」
「え?」
 静かに続けられた言葉に、食器を洗う手を止めて隣の彼を見下ろす。彼はじっとシンクに視線を落としたまま、指先でスポンジに付いた泡を弄んでいる。その目に宿る感情は、読み取れない。
「彼、僕が誰かと親しくすると怖くなるんですよ。だけど僕が一人ぼっちでいると、少しだけ優しくしてくれるんです」
(おかしい)
 少し前から確かに八戒はおかしいとは思っていた。彼が天蓬へ向かって当てるそれが憎悪とは思えないことも薄々感じていた。行き過ぎた愛とも思えるようなそれは形が酷く歪だった。しかし、二人は元々単なる出版社の同僚で、成り行きで作家と担当者の関係になったというだけの間柄であるはずだ。どうしてそんなに八戒が天蓬へ執着する意味があるのかが全く分からない。
 どこか不安げな顔をしている彼が気掛かりで、捲簾は努めて明るく言った。
「……平気だよ、俺は」
「別に心配なんてしてませんよ」
「はいはい」
「本当ですからね」
 何度も何度も念を押す彼に笑いながら、食器洗いを再開する。彼は暫くじっと捲簾を見上げていたが、やがて諦めたように俯いて息を吐く。食器がぶつかり合う小さな音と水音だけが暫く、家の中に静かに響いた。左腕の傍に感じる熱と小さな息遣いだけが、今この瞬間の有り触れたリアルだった。

 天蓬は眠る時、その細く長身の姿態を縮こまらせて膝を引き寄せるようにして眠る。時にはうつ伏せで何かに怯えるように小さくなっていることもある。それは週末ごとに彼の家へ行くようになり、時折泊まらせてもらうようになってから知ったことだった。夜、目を覚まして隣にあるその姿がどうしても痛ましくて可哀想で、躊躇いつつも手を伸ばす。そして軽く髪を撫でてやると、一瞬怯えたように体を強張らせてその後、ゆっくりと安心したように長い息を吐くのである。可哀想だなんて思うのは傲慢だと分かっていても、その姿は見ていられなかったのだ。そして彼は朝、目覚めてすぐに捲簾の姿を探す。そして視界に捲簾の姿を捉えると、安心したように緩く息を吐くのだ。その姿を眠った振りをして窺いながら、ふと気を緩めると手を伸ばしてしまいたくなる衝動を堪えるのである。
 執筆期間中でなくても彼のだらけた生活は変わらない。自分のいない平日の間まともに食事をしているとは思えない。栄養食品でも食べていればいい方だが、彼の場合食べるとしても飴くらい、そしてメインは煙草と酒だ。とんでもない男である。しかし彼の喉に消えたその酒のおかげであのベストセラーたちが産まれたのだった。俄かに信じがたい話だった。寝癖をつけたままでふわふわと欠伸をしている姿を見るとますますその気持ちが濃くなる。しかしそれを見て何だか可愛いと思えてしまうのも、どうなんだろうと自分に疑問を持つ。
 相変わらず彼の家には物がない。本は幾らかあるが、それはいなくなるにしてもすぐに買い取りに来てもらえばいいことだから、ということだろう。彼の中の消滅願望はなくなってはいない。彼は未だにいつかこの一人ぼっちの都会から消えることを夢見ている。消えた後、死ぬつもりなのかそれともどこか遠くで一人のんびり暮らすつもりなのかは分からない。どちらにしてもそれを許すことは出来なかった。
「……」
「どうした? 天蓬」
「片仮名の“ケータイ”と、平仮名“携帯”と、どっちがいいかなあって。口語的には片仮名かな……最近の若者ってどうなんですか」
「お前はオッサンか」
 呆れたように捲簾がそう言うと、テーブルの上にノートパソコンを広げ、息抜きにコーヒーを口にしていた天蓬は一瞬目を見開き、その後小さく肩を揺らして笑った。
「だって僕、三十二ですよ」
 キッチンでコーヒーカップを洗っていた捲簾は突然耳から入ってきた情報に、それを思わず取り落として割りそうになった。それは彼の気に入っているカップなので、割ったらそれこそ事だ。大事にそのカップを両手で掴み、恐る恐る振り返った。
「え……マジ?」
「はい。今年の誕生日で、三十三になります」
 そう言って彼はにこりと笑った。そして再びパソコンに向き合い、やっぱり片仮名ですかねぇ、などと呟きながらキーボードを叩き始めた。そんな少し俯き加減の白い顔を遠くから眺めて、さっきの言葉を飲み込みつつゆっくりと溜息を吐いた。とてもじゃないが三十を越えているようには思えない。ちなみに捲簾は今年で二十八である。では丸五歳年上というわけか。てっきり誤差二歳以内で同じくらいの年頃だと思い込んでいた。
「ちなみに俺、今年で二十八になるんだけど」
「そうですか、きっとそのくらいだろうなーって思ってました。若いっていいですねぇ」
「お前も同じくらいだと思ってたよ」
「そうですか? 褒めても何にも出ませんよー……あ、二十八って言えば、八戒と沙君も同学年ですね」
 そう言われてやっと自分が八戒と同い年だったということに気付いた。自分と悟浄は大学の仲間で、悟浄は八戒と高校からの友人なのだ。だからつまりは三人同い年ということである。今まで考えつきもしなかったことに存外驚いていた。
(何だかなぁ……)
 八戒が特に老けているとかそういうわけではないのだけれど、どうしても自分と同じ年とは思えないのだった。
「デビュー作が出版されたのが僕が二十八の時なんですよ。その時あなたが……」
「二十三だよ」
 丁度その頃新人で、仕事に人間関係に疲れていた時に書店で見つけたのがその本だったのだ。夕焼けの中、河川敷に立ち尽くす男を遠目から映した写真が目を引いた。今思えばあれは彼とその友人である玄奘三蔵とのコラボレーションだったということか。そこまで考えて、あることに思い至った。
「……お前、暇潰しに書いた小説を友達に読まれたって言ったよな」
「ええ」
「それってもしかして、玄奘三蔵のことか?」
 捲簾の言葉に、パソコンに視線を落としていた天蓬は少し驚いたように顔を上げた。しかしすぐに力が抜けたように笑った。
「彼ももう有名人ですもんね」
「いや、俺は知らなかったんだけど悟浄から聞いた」
「彼が僕をデビューさせたも同然なんですよ」
 笑って言う彼の目は捲簾を映しているはずなのに、他の何か懐かしいものを映しているようだった。それが何だか気に入らなくて顔を顰め、それを彼に見られてはならない、とすぐに捲簾はキッチンに姿を隠した。そして取り繕うように淹れるつもりもなかったコーヒー豆の入った袋を引っ張り出した。顔を見たこともない男に嫉妬をして、滑稽にも程がある。

 隠されれば知りたくなるのが人の性だ。顔も素性も隠した彼のことを探ろうと特集を組む雑誌も増えた。しかしどの雑誌でも批評家の想像や読者の意見止まりになっているのが落ちだった。結局誰もそれを突き止めることが出来なかったのだ。出版社にも勿論正体が天蓬であることを知る者がいる。いつ誰が情報を売るか分かったものではない。しかし今のところ、そういった不心得者はいないようだった。
 批評家にも、彼を中年だと言う者から若い女性だと言う者もいる。結局のところ誰にも分からないのだ。


++++


「いい天気ですねぇ」
 のんびりと近くのスーパーへと買い物に出掛けていた天蓬はその帰り道、近所の川の河川敷に一人座り込んでいた。読みかけの文庫本も一冊持ってきてある。昨日までに今月刊の雑誌の仕事は終わらせた。またすぐに来月の仕事が生まれるだろうが、今日明日は仕事から解放されて心身ともにゆっくりとしていられる。陽が出ていても少し寒くなり始めてきた時期だが、日差しは温かいしこのくらい涼しい方が丁度いい。河川敷の斜面に腰掛け、買い物袋を横に置いて本を開いた。遠くで小さな男の子が母親から離れて仔犬の様に駆け回っている。そんな姿を見て微笑みながら、視線を活字へと移していった。
 本来は、書くよりも読む方が好きなのだ。昔から読書の好きな子供だった。かといって人と付き合わないわけでもなく、表面上親しく付き合い適度に距離を置く術を幼い頃から身に付けていた。にこやかに笑う裏で全く違う顔を見せる。そんなところが一体誰に似たのだろうと思うと、ぞっとした。
 単なる遊びだった自分の父と母。それも戸籍上ではない。その父と母は父親、母親と言われるようなそれではなく、単なる子供を作る上での役割に過ぎなかった。そもそも彼らの欲しかったのはその結果である子供ではなく、作る過程に生まれる快感だけだった。母はピルを服用していたはずだ。しかし何の間違いからか母が天蓬を身篭り、母はそのことに妊娠六ヶ月まで気付かなかった。有り得ないことではないらしい。それまで悪阻も何もなく、おかしいと思った時にはもう中絶の出来ないところまで来ていた。金を出せばそれ以降でも中絶手術をする非合法な医師もいるという。しかしそれは母体への悪影響にも繋がる。だから母は天蓬を産んだ。全ては自分が可愛かったからだ。そして出産後、天蓬を使っていいだけ父から養育費をふんだくり、そのまま天蓬を祖父母に押し付けたのだ。今はどこか遠くで最愛の夫と暮らしているという。勝手にすればいい。その後、母は祖父母から勘当された。その以後、彼女とは会っていない。
 この面の皮の厚さといい男らしいとは言い難い顔といい、どう考えても自分は母に似てしまったようである。殆どの母の写真を祖父母は処分してしまったが、数枚だけ残っている彼女の幼い頃の写真は、吐き気がするほど自分に似ていた。
 天蓬の中には正しい“父と母”の像がない。自分を育てた祖父母は確かに優しかったけれどそれはやはり祖父母であって、父母ではなかった。勘当される前の母は何度か金の無心に祖父母の家へと訪れた。その度彼女は“まだ生きてたの”と言いたげな目で天蓬を見て笑った。そして何度も何度も、お前は望まれて生まれた子供ではないのだと天蓬へ言い聞かせた。それを、頭のいい子供だった天蓬はすぐに理解した。そして最後の日、初めて彼女に手を上げる祖父の姿を見た。自分がこの親子を壊してしまったのだと、一人で家を抜け出して夜まで泣いた。それは自分で思い出してもチープすぎるメロドラマだった。これで自分が女だったら悲劇に酔ってどうこうとなるかもしれないが、生憎ただの男である自分はそれ以上どうにもなりようがなかった。
 そういえばあの日祖母が探しに来るまで泣き続けた場所もこんな河川敷だったことを思い出した。対岸の街にぽつぽつネオンが光り始めた頃、泣き疲れて小さくなった天蓬を、上着を持った祖母が優しい笑顔で迎えに来てくれたのを。
 天蓬がデビューしたのを一番喜んでくれたのは祖母だった。少々癖のある文体もあなたらしいと笑ってくれた。

「何してんの、お前」
「……」
 一人思い出に浸っていた天蓬は、思わず文庫本を取り落とし掛けて後ろを振り返る。するとそこにはラフなジャケット姿の捲簾が立っていて、驚いたように天蓬を見下ろしている。脇には茶封筒を抱えていた。急激に鼓動の高くなった胸を押さえるようにしてほっと息を吐いた。何ともタイミングの悪い男だ。どうして今、こんな時に声をかけてくるのだろう。
「何だ……捲簾ですか」
「何だって……何だと思ったんだよ」
 そう問われて沈黙する。まさか祖母かと思っただなんて言えるものか。大体祖母の声があんなに低いわけがないし、あんな言葉遣いはしないし、そもそもここにいるわけがないし。これではまるで、恋しがっているようではないか。
 沈黙した天蓬を不審がるように見つめ、ゆっくりと捲簾は斜面を降りて天蓬の方へと近付いてきた。
「……で? ここで何してんの?」
「買い物がてらの日向ぼっこですよ。ついでに読書」
 そう言って横に置いた買い物袋と手にした文庫本を指して見せる。袋からはカートンの煙草と、美味しそうに焼けた、焼き立てだったバゲットが顔を出していた。
「ところであなたは?」
「いや、お前がちゃんと食ってるかと思って……だけど心配なかったみたいだな」
「ええ、昨日は三蔵と出掛けてご馳走してもらっちゃいましたし」
 彼は途端に表情を渋くした。つい最近感じるようになったことだったが、彼は三蔵の話をすると少し面白くなさそうな顔をするのである。もしかしたら彼は三蔵の写真が好きではないのだろうか、とは薄々思っていた。三蔵と自分とは大学の二年違いの先輩後輩だった。第一印象でもう相容れないものとして彼を関心から除外していた自分と違い、彼は少なからず自分に関心を抱いたようだった。そしてだらだらと付き合いが続いて今に至る。かれこれ十年以上になるのだから長いものだ。
 捲簾はそうして何だかいつも面白くなさげな顔をしながらも、その不機嫌そうな顔を天蓬に見られるのを嫌がるようにいつもすぐに消してしまうのだ。今日もまた巧く誤魔化されたようである。暫くそっぽを向いていた彼は思い出したように脇に抱えていた封筒を掲げた。
「それと、これを渡すため」
「何ですか?」
 唐突に彼が突き出したのは、その茶封筒だった。そしてそれに印刷されている社名を見て顔を顰める。
「……これはまさか」
「八戒発、悟浄と俺経由で、お前へ」
 次の仕事だ。折角今日明日はゆっくりしていられると思っていたのに、それは一旦全て白紙だ。そして新たなスケジュールとしてぎちぎちに仕事が詰め込まれるのは間違いない。
「……折角の休みが」
「まぁまぁ」
「昨日まで雑誌の仕事で、今日からまた小説……」
 いつも言っているのとはまた違った意味で逃避したい。これでも八戒がなるべく天蓬に負担にならない量の仕事を回してくれているのは知っているから、子供のように駄々を捏ねるわけにはいかないのだった。しかし折角の麗らかな休日を潰される恨みは消えないのである。捲簾はそんな天蓬を見て笑いながら、ゆっくり隣に腰を下ろした。
「仕事があるってのは、いいことだぞ?」
「……そうですね」
 それはそうだが、短期に一気に来られるのは負担が大きい。しかし自分の作家としての人生も今が盛りと思えば頑張るしかない。その内きっと、思い出されることすらなくなるのだから。捲簾へお座成りに返事をしつつ、封筒を開いて中から書面を引っ張り出す。新旧の短編作家のアンソロジーへの寄稿依頼、テーマは後程、とのことだった。返事はテーマにもよる。つまりまだ仕事に取り掛かる必要はないということだと気付き、天蓬はほっと息を吐いた。そして書類を封筒に仕舞って買い物袋に立てかける。そして大きく息を吐き出した。
「締切を守るのも一種の能力ですかねぇ」
「まぁな。幾らいい仕事をしても締切に遅れたら仕事をしなかったのと同等かそれ以下の評価になる場合もあるし」
「現役の言葉は耳に痛いです」
 こうしていると忘れるが、彼とて平日は普通のサラリーマンなのだ。悟浄と同じ会社と言っていたから商社の営業マンというところだろうか。人好きしそうなその笑顔は確かに似合いそうだ。
「……よく来るのか?」
「え?」
「ここ」
 突然変わった話題に、天蓬は一瞬戸惑って捲簾の表情を窺った。しかし彼は視線を川からずらさないままだ。その横顔を暫く見つめていた天蓬も、それに倣ってゆっくりと正面の川に顔を向けて答えた。
「ええまぁ……黙ってると外に出ない生活になっちゃうので」
「意外だな」
「失礼ですね、ここは読書にも昼寝にもいいんですよ」
「お前ね……こんなところでこの時勢に無防備に転がってられんのか」
「嫌ですねぇ、“この時勢に”なんて……そこらのじいさんよりも爺臭いですよ」
 どんな反撃が来るか、と身構えたが、彼は返事もなく何か考え込むように頬杖をついてじっと川を見つめている。天蓬はそんな彼を、膝を抱えて観察した。造作は全体的に如何にも男らしい。分類すれば一般的に“モテる顔”に当て嵌まるのではないかと思った。女性向け雑誌を担当しているので、今までに何度かそういった特集を組んだこともあったのだ。自分も長身な方だと思っていたが、彼はその自分よりも高い。八戒や悟浄くらいあるのではないだろうか。そして細身の筋肉質、黒髪短髪。趣味は釣り及びスポーツのアウトドア派。友人は多い。仕事は出来る。……と自分情報と悟浄情報の入り交じった結果を弾き出し、天蓬は溜息を吐いた。神は不公平にも程がある。自分のような生活不能者(無能者か)とはまるで正反対だ。彼のような人間に生まれていたら人生が楽しそうだ。かといってそんな風に生まれ変わりたいだなんて塵ほども思っていないところが天蓬の天蓬たる所以である。
 そして彼について語る上で最も重要なのが、“女好き”なところである。というのも悟浄情報だ。彼も悟浄には言われたくないと思うが。今まで付き合った印象ではそうは思えなかったが、しかし彼がああ見えて悟浄並に軟派である可能性がなくもない。人には色々な面があるものだ、とそこまで考えて、天蓬はあることに気付いた。
「……捲簾って恋人いないんですか?」
「は?」
「そういえばそうですよ。週末毎に僕の家に来てて、いつ彼女に会ってるんですか? 怒られないんですか?」
「……ほっとけ」
 一瞬少し驚き、焦ったような顔をした彼だったが、矢継早に質問をする天蓬に最後には呆れたように斜面に寝転んで顔を隠してしまった。今のところいないということだろうか。あっちこっちに片手では足りないほど彼女がいたという武勇伝はもう過去のものなのだろうか。それはまずいことを訊いてしまった、と天蓬は自重して口を噤んだ。暫く辺りには子供のはしゃぐ声ばかりが響いている。
 ほぼ毎週彼は天蓬の家に訪れる。天蓬はそれを有り難いと思いこそすれ邪魔だとは思っていなかったのだが、何故彼がそこまでしてくれるのかが全く解せなかった。そういえば今まで考えたこともなかった。
 芝の上に寝そべった彼が小さく欠伸をした。彼も平日の激務で疲れているに違いない。
「ちょっと寝ます?」
「え?」
「僕も暫くここで読書しますし」
 そう言って文庫本を翳してみせると、彼は少し悩んだようだったが小さく頷いて瞼を落とした。それから寝息が聞こえ始めるまでにそう時間は掛からなかった。それを確認して天蓬は文庫本に視線を落とした。しかし時折隣の彼が気になってそっと顔を覗き込んだりする。そんなことをしていると、いつになっても本の内容は頭に入ってこなかった。そんな風にゆっくりと過ぎた昼下がりは、夕焼けがぼんやり赤らみ始めると共に終わりを告げた。
 彼はまだ眠っているが、このまま日が暮れると気温が下がり寒くなる。天蓬はその肩に手を掛けて緩く揺すった。
「捲簾、冷えてきますよー、帰りますよー」
 二、三度強く揺すると、彼は少し顔を顰めて細く目を開けた。そして辺りが暗くなっていることに気付いたのか、ゆっくり息を吐きながら身体を起こした。そして息を吐きながらその大きな身体で伸びをする。
「……どのくらい、寝てた……?」
「えーと、三時くらいからだから……二時間くらいですかね」
 川の水面に夕日が映ってキラキラと眩しい。天蓬は先に立ち上がって服を払い、置いてあった封筒と買い物袋を持った。
「僕は帰りますよ」
「おいおい置いていく気か」
「来るんですか?」
「行っちゃ拙いなら行かないけど」
 芝に手をついたまま座り込んでいる彼が、じっと自分を見上げている。何だかこの人は本当によく分からない。天蓬は首を傾げた。
「……つくづく思いますけど、変な人ですよね」
「あ?」
「趣味悪いって、言われません?」
「馬鹿な。俺の趣味は最高だぞ?」
 そう言うと彼は勢い良く立ち上がり、服をほろった。そして斜面を登って天蓬に並ぶ。やっぱり少し背が高い。その差が憎い。そして自然に天蓬が家へ向かって歩き出すのに、彼も付いてくる。背後に沈んでゆく夕日で、二人の前には長い影が伸びた。


 八戒は書面を前に溜息を吐いていた。それは先日天蓬に渡した寄稿依頼の正式なものだ。今日届いた。新旧の短編を書く作家にテーマを課して、それを集めた短編集を作るというもの。まだ未定だったそのテーマが正式に送られてきたのだ。そのテーマに八戒は頭を悩ませていた。白い書面を前に、何度も何度も重苦しい溜息を吐く八戒の姿に同僚たちも心配そうな目を向けている。
 テーマは『家族』。彼に最も相応しくないテーマだった。


 久しぶりに仕事の用件で顔を合わせた三蔵と天蓬は、出版社の応接室にいた。しんと静まり返った部屋に、衣擦れだけが響く。
「お前、最近週末何をしてる?」
 そう問われて天蓬はミネラルウォーターのボトルを傾けたまま、視線をさ迷わせる。別に話して拙いことではない。しかし彼の目が存外に真剣なことに少し驚いていたのだ。その鋭い視線から逃れるように、ローテーブルに並べられた書類を何の気なしに手に取ってみる。
「何をって……普通に過ごしてますよ」
「……質問を変える。誰と、過ごしてる?」
「何でそんなことを訊くんですか?」
「いいから答えろ」
「どうして」
 彼が自分と同じくらいか寧ろそれ以上に短気なことを知っている。押し問答を続ければいずれ怒り出すことも。
「知人と会っているだけです。それがあなたに何の関係があるんですか」
 そう少し強めに言うと、彼は驚いたように一瞬目を瞠り、面白くなさげに顔を顰めて皮肉っぽく笑った。
「……可愛くなくなったな、天蓬」
「まぁ僕もあなたもいい年をしたオッサンですからね。可愛かったら気色が悪いでしょう。……あなた、三十五歳になるじゃありませんか」
「覚えてんのか」
「僕より二つ上だってことくらい、覚えてますよ」
「お前ももうすぐ三十三だな。祝ってやろうか」
「結構ですよ。……別に、本当の誕生日でもないし」
 本当の誕生日は自分でも分からない。自分は母が一人で産んだ。だから、彼女以外は、分からない。その彼女とも、もう家族ではないから話すこともない。今の自分の誕生日は、自分が祖父母に引き取られた日だ。祖母の住む実家を出てからは誕生日は一人で過ごすことにしている。自分という人間を見つめ直すために。
「相変わらずだな。……しかしその信念を、今年からは変えるつもりか?」
「何……」
「その男と過ごす気か?」
 予想外の言葉と皮肉な笑みに言葉を失う。そして咄嗟に部屋のカレンダーに視線を滑らせた。今年の自分の誕生日は、土曜。
「……何で男だって分かるんです」
「お前のことだからな」
「人をゲイ扱いして楽しいですか」
「そう聞こえるか?」
「同罪のくせに」
 それまで余裕の笑みを消さなかった三蔵は、その言葉に右眉を跳ね上げる。しかしまたすぐにおかしそうに笑った。その笑いが憎い。
「お前は女にもそれなりにモテるらしいがな。……男を寄せ付ける能力の方が高いんじゃないのか?」
 その瞬間、数枚の書面が空を舞い、ひらひらと床へ散っていく。咄嗟に立ち上がり、半ば無意識に掴んだ書面を三蔵に叩き付けたのだった。頬を押さえた彼がゆっくりと薄く目を開く。その整った顔に、吐き捨てるように天蓬は言った。
「……あなたに抱かれたことは、人生の汚点だと思っています」
 そう言うと彼は小さく笑い、何も言うことなく立ち上がった。そしてバッグを持ち上げドアの前まで行き、ふとそこで一度振り返った。
「その男がいつまでもお前のところへ来るという保証が、どこにある?」
「話は終わりです。当分僕の前に顔も出さないで下さい」
 憎らしげな目を向ける天蓬に、三蔵は何も言わずドアを開けて部屋を出て行く。その後、ドアがゆっくり閉まるのを、天蓬は書類の散乱した部屋の中で立ち尽くしたまま見つめていた。











八戒が可愛くないのが…すみません。そして三天(過去形)でした。         2006/10/29