A robot may not harm a human being, or, through inaction, allow a human being to come to harm.
A robot must obey the orders given to it by the human beings, except where such orders would conflict with the First Law.
A robot must protect its own existence, as long as such protection does not conflict the First or Second Law.

(僕の中に、あの人を殺そうとする鬼がいる。)


LEMON













「これが俺のプログラムしたアンドロイドの、十体目。NO.10で、“テン”という」

「お前はどうして笑えないんだ?」

「プレス処分にして下さい、今すぐ」


「このまま貴方を殺せば、僕は処分してもらえるでしょうか」

「なあ、もう少しだけ、俺と暮らしてみねぇ?」




「ロボット工学三原則、というのをご存知ですか」





「――――笑えるんじゃん。何だ、ずっと笑ってろよ、その方がずっといい」





「唇と唇をくっ付けることに何の意味があるんですか?」
「……あーもー言わなくていい!」
「勝手にしておいて何ですか、それ」






ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。
ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。






「このイキモノは?」
「あ?猫だよ、ネコ。……触ったことねぇの?」
「……見たのもはじめてです」
「……。触ってみ。柔らかいぜ」


「ウミ、って何ですか?」
「海?でっかい水溜りだよ。それこそ、命の源のな」









「いつまでここにいてもいいんですか?」
「……別に、他所に行く必要なんてねぇだろ」





















「重大なプログラムミスがあることが解った」















「本気で性根が腐ってやがる」


「アンドロイドたちが急に暴走を始めて主人に危害を加え始めた。NO.8とNO.10も早急に回収しなければならない」
「つまりは、“処分対象”だと?」
「―――――“殺す”のか?テンとハチを。……ふざけんな!」


「冷静になれ。“あれ”は、人間ではない。鉄が合成皮膚を被っただけの塊だ。冷蔵庫や掃除機と何ら変わりない」




「人間にも鉄屑にもなりきれなかった、哀れな子供たちさ」




「僕たちの中に、ヒトを殺そうとする鬼がいるんです。」
「コロス、って、どういうことですか?」
「ヒトがいきるのをやめさせることです。」
「それは、修理しても直らないんですか?」
「……ハチ、ヒトは修理できないんです。」





「確かにおかしいです。眼球から液体が零れてきました。故障かも知れません」



「愛なんてよく解らないアイツに愛してるなんて言える訳ねぇだろォが――――――……」




「一緒に消えちゃいましょうか、テン。」
「そ、ですね。」
「……どこに行きましょうか。」
「……海に。」
「僕らなら沈めば浮かばないですね。」
「僕、一度もホンモノを見たことがないんです。」
「見たいですね。」
「はい。」



「ハチ、ハチ。あなたはあの人といてしあわせでしたか。」
「とってもしあわせでした。テンは?」
「しあわせはよくわかりません。だけど、今はこころがしくしくします。」
「あの人がいないからですか?」
「どうしてあの人がいないとこころがしくしくするんですか?」
「テンが、あの人のことを大事だって思ってるからですよ。」







ぼくたちがぼくたちのままでいられるうちに。








「いっせーの、で、飛びましょうか。」
「はい。」
「テン。」
「はい?」
「だいすきですよ。」
「……ぼくもです。」
「またいつか、どこかで。」
「ええ、きっと。」








(あなたといたときの記憶だけが、つくりものだらけの僕の頭の中の、唯一の本物でした)












「いっせーの。」
























…というパラレルを考えたのですが、あまりにも壮大で実現不可だったので、予告もどきだけ作ってみました。
ロボな天ちゃんと八戒さん。しかも安直。NO.8のハチとNO.10のテン。LEMONは“欠陥品”のことです。
……一度トレーラーもどきが作ってみたかったんです……。     2006/05/31