天蓬は頭の良い子だった。捲簾の持っていた書物に興味を示したので貸してやると、日が傾き障子が赤く染まるまでずっとそうして本を読んで過ごしていた。流石に暗がりの中で本を読めば、ただでも眼鏡を掛けていて視力がよくないのだろうに更に悪くなってしまう。書類に目を通してその姿を眺めていた捲簾は立ち上がり、本の世界にのめり込んでいる少年の肩を叩いた。
「そろそろ止めないと目が悪くなるぞ」
「……あ、すみません。つい熱中してしまって」
「ああいい。また明日読めばいいだろう。貸しておいてやるから、夜は読むなよ」
「はい!」
本を胸に抱えて嬉しそうに頷く少年は、十四の少年と言われても相違ない姿だった。少年はいそいそと本を片付け、蝋燭を貰ってくると言って部屋を出ていった。朝はどうなるかと思ったが、何とかとっかかりが出来たようでほっとする。また一からやり直しかと困ってしまった。彼が戻ってくるまでに雨戸を閉めておこうと縁側に出た。赤い日差しが目に眩しく、目を細める。上着がないと少し寒く感じるような気温だった。首元が寒くて肩を窄めながらも、雨戸に手を掛ける。
庭の端に立ち尽くすさくらを見上げた。帰るあてのないさくら。帰る場所を忘れてしまったさくら。彼もまた本当にそうなのだろうか。
出来るのなら探してやりたいと思った。彼の帰る場所を、もっとよい居場所を。だがあまりに手がかりがなさ過ぎる。この館の者が口を割るとは思えなかった。自ら望んで『唄鳥』となったものはいないだろう。誰もが何かの必要に迫られ、攫われてきたに違いない。しかし今無駄にそれを突付いて、館から追い出されては元も子もない。相手が自分を軍人だと警戒している間に、何か仕掛けなければ彼を鳥篭から出すことは叶わなくなる。ただでも彼はもうここから出ることを諦めてしまっている。
(良くない感じがするな)
一刻も早く連れ出したい。そのためには一人では駄目だった。
ふと思いついた捲簾は、自分の鞄から紙を取り出した。そして先程まで使っていた万年筆を手に取り、手早く文をしたためた。そして重り代わりに中にその万年筆を入れて丸めた。それを手にして縁側に戻り、庭に出て力一杯その丸めた紙を塀の外側に投げ捨てた。この外は大通りになっているはずである。運が良ければ、誰かが拾ってくれるだろう。友人が、この町の人間は基本的にいい奴だと言っていた。その言葉を信じるほかない。
どうかどうか誰かが拾ってくれますように。時間がない。あと二日間だ。この館の実態を知った軍人である自分を、彼らがみすみす逃すとは思えない。昨日の夜とて刺客がなかったことに驚きだった。この館に誘い入れて中で殺すつもりであるのは確かだった。それに思い至ったのが昨日の夜だったのは自分の最大の不覚であった。ひょっとしたら食事にも幾らか毒が盛られていた可能性がある。その可能性に気付かず、うっかり天蓬にそれを勧めるところだった。自分は訓練で多少の毒への耐性をつけているが、彼は違う。まだ小さくて、耐性もない。彼らはきっと天蓬を巻き添えにすることも厭わないだろう。
夕日が山の向こうに沈んでゆく。闇に閉ざされる外界を見る前に、捲簾は雨戸をぴしゃりと閉めた。
食事は慎重に手をつけた。天蓬の分の食事もつまみ食いするような格好で冗談めかして、軽く毒見をした。その時におかしな味は感じ取れなかった。殺すのだとしたら二人一度にだろう。こんな商売をしているのだからどこに武器を隠し持っているかも分からない。今回の旅には刀を一振りしか持参していない。それ一つで応戦し、彼を守り抜くことが出来るかが問題だった。
そして膳を下げてから、火を低くして布団に身を横たえる。今夜は冷えそうだった。布団をもう一式入れると言ったのを忘れていたらしい彼が恐縮するのを止めて、一緒に寝ることを提案した。子供扱いをされたと少し不満げな顔をしていた彼は、それでも自分の物忘れが原因だという負い目があるせいか、存外素直に布団に潜り込んできた。子供というのは体温が高いものだと思っていたが彼は極端に身体が冷たかった。栄養もまともに取らず、あの薄い着物一枚しか与えられていないのだから当然と言えば当然の話だろう。
冷たい手が自分の手首に触れる。無意識のうちに、その冷たい小さな手を掌に握り込んでいた。驚いたように一瞬手を引こうとした天蓬は、捲簾と目が合うとその動きを止めて少し恥ずかしそうに視線を逸らした。
「子供扱い、しないで下さい。別に昨日みたいにして貰わなきゃ眠れないわけじゃないんですから」
「お前の手があんまり冷たいからな。温かくなった方が、一緒に寝る身としては嬉しいんだ」
そう言って小さな手を握るとそれ以上の反論は聞かれなくなる。黙り込んだ少年は、言い返せないことが悔しいのか暫く捲簾を睨んでいたがそのうち諦めたように小さく息を吐いた。そして捲簾の掌の感触を確かめるように指を掌に滑らせた。
「……硬いです、ね」
「そりゃあな。並な訓練量じゃないから」
「それに比べたら、僕は貧相ですね」
自嘲するようにそう言って、掴まれているのとは逆の手で捲簾の指先を探るように撫でた。自分の指先なんてがさついているだけで何も楽しくないだろうに、彼は何か熱心に捲簾の手に触れている。その彼の手はと言えば、白く細いのは確かだが白魚のよう、というのとは遠くかけ離れた、傷だらけで荒れた手だった。爪も所々欠けて痛々しい。許されない、と思った。今まで可哀想な子供たちを見ることは覚え切れないほどにあった。しかしこんな風に、一人だけを守り抜きたいと思ったことがあっただろうか。この屋敷にも今可哀想な子供が何人も働かされているに違いない。それでも、何をしてでもその中の彼だけは救い出したかった。
(おかしな子供だ)
誰がこの子をあやかしでないと言い切れるだろう。整った顔立ちも、蠱惑の色を浮かべた眸も、何一つ人間のものとは思えなかった。
(しかしそれがよくない)
ヒトは自分の理解出来ないものを排除しようとする。彼にこんな仕打ちをしたのも無理解な人間たちのせいに他ならないのだ。
渋い顔をしている捲簾に気付いたのか、指をまじまじと眺めていた彼は、そっと手を離した。嫌がられたと思ったのだろうか、と離れていこうとするその手を上から重ねるようにして掴まえた。驚いたように顔を上げた彼は、慌てて視線を落としてしまった。
「……どうした」
「難しい顔をしていたので」
「ああ、この歳になると悩むことが多くてな……ああ、年齢は関係ないな、悪い」
彼の場合悩みなんていう規模ではないのだろうけれど軽はずみな発言を詫びると、彼は首を横に振った。そして真っ直ぐにじっと捲簾を見つめてくる。その視線の意味を図りかねて「何だ」と訊ねれば、少し躊躇ったように唇を噛んでいた天蓬はちらりと再び視線を上げて口を開いた。
「……何か、好きな唄はありますか」
「好きな、唄? ああ、まあそれは、でもそれがどうか」
「宜しければ……何かお礼に唄わせて頂けませんか」
彼が唄を唄う、ということにも引っ掛かったがまず『お礼』という言葉が気になった。そう訊ねると、天蓬は少し物憂げに視線を横にずらし、枕の上で重ねられた二人の手を見つめた。火の色を映して、その無機質な眸が力を帯びる。握った手に僅かに力を込めてみせると、彼は一瞬驚いたような顔を見せたものの次の瞬間にはくすぐったそうに笑い出した。そして、うれしい、と彼は囁くように口にした。それは本当に本当に幸せそうな笑顔で、どうしてこれだけのことでそんなに喜べるのだろうと逆に冷静になってしまった。唄はやめるんじゃなかったのか、と問えば彼は素直にこくりと頷く。
「あなたが昨日僕を買わなければ、僕は喉を潰されて殺されていたはずでした。……だからあなただけ、特別です」
特別、という響きがこんなに胸に響くものとは思わなかった。子供の打算のないその言葉は、荒れた胸にひりひりするほど沁みた。自分がおかしかった。昨日出会ったばかりの子供のために何でもしそうな自分が、おかしくて少しだけ恐ろしかった。絡ませた指の先から伝わる幼い体温を逃さぬよう、指一本逃さぬように掌に包み込んだ。
「好きな唄、と言われてもな……そうだな、お前の一番好きな唄でいい」
そう言うと彼は少し困ったように眉根を寄せ、僅かな逡巡の後、知らない唄かも知れませんよ、ともごもごと歯切れ悪く言った。構わないと返すと、それでもまだ気になるのか暫く視線を彷徨わせていたが、その内諦めたようにゆっくりと深く息を吐いた。そして突然布団から起き上がる。そしてめくれ上がった布団をきちんと捲簾の上に掛け直してから、小さく咳払いをした。
「長いこと唄っていないんです。……耳障りだったら、止めて下さい」
そう言い置いて、天蓬は細く長く息を吐いた。そして深く吸い込んだ。外で番の相手を探す虫が、俄かに鳴き止んだ気がした。
ゆったりと旋律を奏でる唇を見つめるばかりだった。僅かに緊張しているのか、繋がれた指先は僅かに冷たくなっていた。その冷たさを補うようにその指先を掌に握り込む。するとそれに応じるように彼の、強張っていた指からは力が抜けた。その間も流れるような歌声は途切れることも乱れることもない。話し声より僅かに高い澄んだ声が、静かな部屋の中に響いて、共鳴するように炎が揺れた。
どこかで耳にしたことのあるような気がした。その唄を聴いていると、どこか懐かしい気分になってくる。ゆっくりと瞼を伏せて、誰が唄ったのを聴いたのだっただろうかと思いを馳せた。甘い声が耳に響いて、郷愁の想いを誘う。その声に重なって、少し低い女の唄声が頭の中に蘇ってきた。いつも笑顔を浮かべて、しかし周りのものを一定の距離には受け入れないその不思議な女は、聴く者全てを魅了する不思議な声をしていた。彼の声はその女の唄い声によく似ていた。
唄を終えた後も、静かに手を繋いだままでいた。唄の余韻が頭に残って、未だ部屋の空気を震わせている気がした。
「いい声だ」
「全然駄目です。この状況を言い訳にして怠けていたから、全然声が響かない」
拗ねたようにそう口にする少年の顔を横になったまま見上げると、頬は僅かに紅潮していて、気分の昂ぶりが見て取れた。本当は彼は唄うことが好きなのだろう。しかし『唄』を求められないことに絶望して唄を忘れた振りをしていた。鳥篭の主は彼の見た目しか必要としないのである。鳥篭から出して好きなだけ唄わせてやりたい。彼が求むるのならば居場所となってやりたかった。
「そういえば……その唄をどこで?」
ふと思い付いて捲簾は、自分の横で正座している天蓬を見上げて訊ねた。この唄を唄っていた女は、この唄を知っているのはもう自分の他いないと話してはいなかったか。それがどういう意味かは分からなかったが、それを訊ねることを許さない雰囲気を持った彼女は、納得のいかない顔をしている捲簾を前にして静かに微笑んでいた。そんな彼女の表情を思い返しながら再び少年を見上げると、彼は驚いたように目を見開いて、布団に両手を突いて食いかかるように捲簾に顔を近づけてきた。
「ご存知なんですか!」
「……何か、あるのか。この唄に」
「この唄は、何も覚えていなかった僕が唯一覚えていたものです。この唄に何か、記憶を取り戻す手掛かりがあるはずなんです」
そう自分に言い募る必死な表情には、今まで彼が押し殺していた感情が全て詰まっているように思えた。彼はここを出ることを諦めているのだと思っていたが、そうではないのだ。本当は自分の失った過去が知りたくて、帰る場所をずっと探していたのだ。ならば悩む必要はない。自分の希望と彼の希望が合致するのならばそれを回避する手はない。
そう、俄然やる気が沸いてきたと意気込んでいると、障子の外、雨戸を何かが叩く音がした。まさか、と思い、自分に覆い被さっている天蓬を押し退けて布団から起き上がった。そして障子を開けて、音を立てぬようにそっと雨戸を開く。外は暗くて、塀の外に街灯があるとはいえ物が見えづらい。
「どうか……」
「悪い、火を取ってくれ」
そう頼むと、一度部屋に戻った天蓬は、部屋の火をランタンに移して運んできてくれた。それを翳し、足元を照らしながらゆっくりと庭を見て回る。すると雨戸に当たって落ちたと思われる場所に、白い塊があるのに気付いた。それを拾った捲簾は、館のものに見られる前にと天蓬を連れて再び部屋へと戻った。
「それは何……ですか?」
彼に説明をしてやる前にまず目を通しておかなければならない。布団の上に腰を下ろして、その白い紙の塊を開いた。中に包まれているのは、今日の暮れ方、重し代わりに使った捲簾の万年筆だ。紙の表面に記された文字は間違いなく友人のものだった。
夕暮れの中、外へ投げた手紙には捲簾の頭にある計画の一部分が記されていた。勿論こちらの名前もあちらの名前も書いていない。館のものに拾われた時に面倒だからだ。しかしこの万年筆があれば彼が見間違うはずはないだろうと確信していた。軍学校を卒業する際に卒業生にそれぞれ配られる一律の安物である。軍人だけあって流石にけちだ、と彼と笑い合った記憶がある、それを彼も忘れていないだろうと信じていた。そして返って来た手紙に書かれていた内容は了承の意。計画の全貌も知らぬまま協力を申し出てしまうような人のよさが彼らしかった。彼が軍人にならなかったのは得策だったろう。あんな優しい男が戦に出られるはずがない。
手紙を見ながら考え込んだり笑ったりする捲簾を少し困ったように見つめていた天蓬に漸く向き直った捲簾は、咳払いを一つした。
「知り合いに、その唄を好んで唄う女がいる。その女は俺と同じ街に住んでいて……その女は、今その唄を知っているのは自分だけだろうと言っていた。その事情は知らないが、その人ならお前の記憶を取り戻す鍵を持っているかも知れない」
その話を聞く天蓬の眸には、今までになかった火が灯っていた。生きる意志が静かに灯り始める。
「お前をここから連れ出したい。邑慶とその仲間も協力してくれると言っている。この近くにある分隊にも連絡を取ってくれるそうだ」
「……いいんですか?」
「何がだ」
「国属の軍人が、一人の子供のためにそんなこと」
「軍は国民のために、だからな。だが……今回はそうじゃあない」
じっと真っ直ぐ自分を見つめてくる眸を正面から見つめ返した。思った以上に自分が緊張していることに気付く。まるで想いを告白するようだ、と冗談のようなことを思い、それがあながち冗談でもないのではないかということに気付いてしまう。
手を伸ばすと一瞬怯えるように身体を縮こまらせた天蓬は、頬に触れる体温にそろりと顔を上げた。その目が不思議そうに捲簾を見上げ、次の言葉を促すように二度、大きく瞬きをした。その眸の中には確かに熱の通った人間らしい感情が満ちている。
「お前だから助けたい。お前が太陽の下で好きなだけ唄うところが見たい」
ジジ、と嫌な音がして、また虫が翅を焦がしているのだろうと小さく息を吐いた。それ以外はしんとした部屋の中には、庭から響く秋虫の鳴き声が静かな風情で響いていた。再び彼へと視線を戻すと、真っ直ぐにこちらを見つめる眸が滲んでいた。そのまま伸ばした腕で彼の身体を引き寄せて抱きしめる。捲簾の腹部に顔を押し付ける格好になった天蓬は、それでも抵抗をしなかった。
自分の服に埋もれたその小さな頭を見下ろして、僅かに開いたままの雨戸から差し込む月の光りに照らされた黒髪を静かに撫でた。
そのまま眠ってしまった彼を布団に横たわらせてから、捲簾は部屋の隅に据えつけられた小さな机に向かった。軍に応援を頼むのは口頭では無理だ、捲簾が一筆書かねばならない。明日の指定の時間にこの手紙を外に投げてやれば彼はそれを受け取り、分隊まで届けてくれる。この町の近くの分隊には友人が詰めている。きっと応援は来るだろう。馬は邑慶が用意してくれる。それなりこの町も損害を受けるだろう。そんな町をそのままにして去ることに不安がないわけではない。しかし一刻も早く天蓬をこの町から引き離したかった。紙に新しい万年筆を滑らせて、署名の後に自分の印を押し付ける。赤く浮かび上がったそれは正式な依頼の証拠だ。それを封筒に収めて、封をし、重りにする既に壊れた古い万年筆を括り付けて、自分から邑慶に当てた手紙も挟み込む。後は時間通りにこれを邑慶に届けるだけ。
胡坐を掻いたまま布団の方を振り返った捲簾は、布団に横たわって小さな寝息を立てる天蓬を見つめた。赤く腫れた目元が痛々しい。膝立ちで布団の脇まで移動し、その場で再び胡坐を掻いた。目に掛かる前髪をよけてやると、それがくすぐったかったのか天蓬は小さく唸った。暫くもぞもぞと身動ぎをしていたが、漸く居心地のいい場所を見つけたように深く息を吐いた。そして再び穏やかな寝息が聞こえ始めた。布団から出たままの彼の手を布団の中に収め、掛け布団を首元まで引き上げてやる。
機は二日後の早朝。それを逃せば後はない。自分の命も、彼の命もだ。
朝日が昇りきる前に起き上がると、天蓬はまだ眠っていた。それを起こさぬようにそっと立ち上がって、昨日書いた手紙を持って障子を開けた。そしてなるべく音を立てぬようにゆっくりと雨戸を開く。開いた端から差し込む細い太陽の光に目を細めつつ、草履を引っ掛けて庭に出た。そして庭と外とを隔てる塀に近付いて、その隙間から外を覗いてみた。まだ人通りのない通路の端に、見慣れた姿を見つけた。なるべくそちらの方向へ向かうように、塀越しに手紙を投げる。カシ、と固いものが地面に落ちる音がして、その後近付いてくる足音が聞こえた。それと同時に、外から庭へと昨日と同じように手紙が投げ込まれた。それを拾い、天蓬が目覚めてしまう前に部屋へ戻ることにした。吐き出した空気が白く染まる。
いつの間にか朝夕が冷える季節になっていた。冷えた足の先を手で擦りつつ、部屋の座椅子に腰掛ける。そしてそっと開いたくしゃくしゃの手紙には馬を繋いである場所、即ちここから逃げて向かわなければならない先が書いてあった。門の前には屈強な用心棒が何人もいる。分隊から派遣される応援の数にも因るが、一滴の血も流さずには済みそうになかった。自分はどうあれ、天蓬が巻き込まれさえしなければどうでもよかった。彼がそれを喜ぶまいと、それに関係はなかった。こんな人身売買のようなことを許すわけにはいかない、それは確かだったが、それが建前であるという自覚も持っていた。たとえこの館が行っていることが合法だったとしても、自分は彼を連れて行きたいと願っただろう。
もやもやする。自分は間違ったことをしようとしているわけではないのに、この罪悪感は、一体何だ。
天蓬が目覚める頃には、降り頻る雨が絶えることなくしっとりと地面を濡らし始めていた。さらさらと外から、雨粒が草花の上にぶつかる音が聞こえる。雨粒が花弁を揺らし、弾かれて地面に落ちる。砂利の上に雨の落ちる、しゃらしゃらという音が耳に心地いい。
雨に濡れた庭を眺めながら、捲簾は天蓬の包帯を取り替えていた。まっさらな背中についた傷は端から瘡蓋となり、治り始めている。しかし明日のことを考えれば、少しでも傷を保護しておいた方がいいだろうと考えたのだ。捲簾が傷の消毒を終えて包帯を巻いている間、天蓬は半身を露わにしたままぼんやりと庭を見つめている。庭を見ているというより、視線をどこか一点にじっと身動ぎ一つせず固定していた。
「出ていくとなると、寂しいか」
そう声を掛けると、静かに彼は肩越しに振り返った。背骨の線が僅かに反り返って、白い背中に陰影を作る様が艶めかしい。表情のない顔を向けた彼だったが、捲簾には彼が困惑しているのだろうということが分かって、それ以上返事を催促することもなく再び包帯を巻く作業に戻った。暫く捲簾を見つめていた彼は、次第に顔を正面に戻した。僅かに俯き、背中を丸めたせいで背骨が少し浮かび上がる、肉付きのよくない身体であるだけにそれは顕著だった。触れてみたい、と思ったがそれは理性で押し留めて、背骨の線を覆い隠すように包帯を巻きつけ、包帯留めで留めた。
「おかしいと、思いますか」
「さあな。生憎お前のような環境に置かれたことがないから、今のお前の心境は推し量れないよ。おかしいもおかしくないもない」
そう言い捨てると、彼は少し不満そうに眉根を寄せて捲簾をちらりと振り返った。しかしその視線には気付かぬ振りで薬箱を片付けていると、そのうち拗ねたように彼は再び顔を正面に向けてしまった。そんな子供らしい仕草に笑って、帯のところで止まっている着物を肩に掛けてやった。薄いその肩には薄布一枚では寒すぎるように思えた。
「寂しい、のかも知れません。だからといってずっとこの場所にいたいわけじゃないんです。でも、何だか、この町を見捨てるみたいで」
自分の心に残っていたしこりが彼の心にもあったということに一瞬手を止める。しかし、自分にも彼にも今この町に出来ることは何もないのだ。自分はともかく彼の場合はこの場にいては余計に面倒なことになってしまう。言葉は悪いが、彼はこの場にいない方がいいのである。軍の調査が入って関係者が捕らえられればきっとこの館の『唄鳥』たちも保護され、事情を聴かれて暫く勾留されることになるだろう、そうしたら彼を街へ連れ帰るのは大分後の話になってしまう。
「何れこの町からおかしなものが一掃されて元通りになれば、そう遠くじゃない、また遊びに来られるだろう」
そう言って着物の襟を正してやると、暫く何を考えているのか俯いていた天蓬は、少しだけ再び顔を上げた。庭の横では雨に打たれて狂い咲きのさくらが花弁を散らされている。雨に打たれて褪せた感のある薄紅の花弁が、地面に落ちて泥に塗れていく。
「……足手纏いには、ならないようにします」
「気を遣うな。俺が全てどうにかしてやる」
「余計なことをしない方があなたにとって都合がいいのなら、大人しくしています」
「賢明だな、そうして貰えると助かる。お前を侮っているわけじゃない、だけどこの件には、お前の脚力ではついていけないだろうからな」
長い間この屋敷の中でしか生活しておらず、走ったことすらなさそうな彼の脚では自分の走る速さにはどうしたってついてはこられないだろう。ならば肩に担いだ方がずっと楽で危険も少ない。追っ手を強行突破し、馬屋へ向かってその馬に乗ってこの町を出る。追っ手は応援が押し留めてくれるだろうから自分たちはひたすら逃げるだけだ。その機は一度切り。
「何も心配することはない」
「変な人」
「何?」
「つい一昨日会ったばかりの子供にそこまで入れ込むなんて、余程子供が好きか、お人好しですね」
子供は好きだ。しかし、彼を今まで出会ってきた中の可哀想な子供の一人を考えたのは、最初の一夜だけだった。今自分は彼を何だと思っているのか分からない。そのまま返す言葉が思い付かなかった捲簾は、曖昧な笑みを浮かべたまま、前に座る少年の小さな頭を撫でた。暫くそれを続けていると、その間ずっとその手を甘受していた天蓬は、掌に顔を擦り寄せるように甘えてきた。
「――――大丈夫。きっといつかお前が誰なのか分かるさ」
「じゃあ、今の僕は一体誰ですか」
答えを出せずに放置していたそれを直球で突きつけられて、捲簾は一瞬言葉に詰まる。しかし頭をまっさらにして考えれば簡単なことだ。その言葉で彼が納得するかどうかは別の問題だったが。
「天蓬っていう、一人の小僧だろ」
「何ですか、それ」
「俺にも分かんねえよ、お前が誰かなんて。でも逆に言やあ、俺はお前が誰だっていいんだ」
その後に広がる沈黙を雨音が埋め尽くし、天蓬の唇から吐き出されるかすかな溜息を覆い隠していく。
「僕は、怖いです。自分が一体誰なのか。自分の正体を知らずに生きることは、まるで一生外れぬ仮面を付けているようで。周りの者は僕の本当の顔をその仮面だと思い込んでいて、そのまま定着していく。だけど僕自身だけはそれが本当でないことを知っている。天蓬という名前自体、ここの館の者がつけた名だと聞いています。だとしたら天蓬という人間はこの館にいることによってのみ、その存在する意味を持しているのではないですか」
ならば今の捲簾の目に映る彼も、本当の天蓬ではないのだろうか。いや、ひょっとしたら彼は別の名を持つ別の個体だったのかも知れない。記憶を落とす、その前は。そうであるなら尚更知りたいと思った。もしも彼が記憶をそのままに成長して十四まで育ったとしたらどんな子供になっていたのか。どんな笑顔で笑う子供だったのか。どんな風に怒る子供だったのか。
「一度踏み間違えた人生を、分岐点まで戻ってやり直すことは出来ない。だからお前がもし記憶を失わなかったらというのは所詮空論だ。……が、見てみたかったとは思うよ」
「……どうしてです?」
すっかりしょげてしまった子供に視線を合わせるように上体を屈めて、俯いたその顔を覗き込む。折った膝の上で組んだ両手を見下ろしていた天蓬は、傷付いたような眸をちらりと上げてすぐにまた下に落としてしまう。
「今のお前が嫌だというわけじゃねえんだ、そんな顔するな」
そう声を掛けると、再びおずおずと顔を上げた天蓬は、じっと上目をつかって捲簾を見つめた。
「やっぱりおかしな人」
「何が?」
「あなたは僕が何を考えているのか、こころが透けて見えているみたいです」
そう言って天蓬は薄く笑い、緩めてあった帯を締め直し始めた。しかしその手はなかなか巧く動かず、彼自身苛立っているようだった。俯いたその時、僅かに伏せられた蒼白い瞼が、彼がもうすぐ曖昧な『少年』を抜け出すことを予感させていた。
部屋へ差し込み始めた赤が最後の日の終幕を告げる。まだ大人になりきれずにいる少年の戸惑いが、夜の帳に覆い隠されていく。
永遠とも思われた夜が明ける。布団の上でじっと正座をしている少年は、先程から小さく震え始めていた。
壁に凭れ、じっと腕組みをして目を伏せていた捲簾の鼓膜を、どこからか聞こえる合図の爆竹の音が震わせた。緊張した面持ちをしていた天蓬が不安げにこちらを見上げてくるのに微笑み返し、黒い外套でその身体を包み込んだ。細い身体を抱え上げると思った以上に軽く、哀しく思ったと同時に好都合だ、と思った。幾ら小さな少年だからといってあまり重ければ刀を振るうのに支障がある。抱え上げた身体を、脚が前になるよう肩に担ぎ、刀を手にして鞘はその場に置いたまま部屋の襖を開けた。既に異常を察知したのか館の者が廊下の向こう側から走ってくる音がする。自分がひとごろしとなる場面を彼には見せたくなかった。しかし今はそんな甘いことを言っていられる余裕はない。部屋の中から、庭から入ってきた用心棒たちが背後から迫っている気配がしている。その瞬間、天蓬が鋭く息を吸う音が聴こえた。
「捲簾、庭からっ」
「外套を被って頭を伏せてろ」
そう言い端、廊下の向こうから走ってきた男たちの目がこちらを捕らえた。各々の手には刀が握られている。しん、と静まった廊下には、誰かが足を踏み出したのか廊下が軋む微かな音が響いた。
「この先は行かせぬ。貴様をこの町から出すわけにはいかんのだ」
「……ああ、そうかい」
そう答え、間合いを取ったまま捲簾は耳を澄ました。機は一度切り、応援部隊が突入した瞬間のみ。息遣い、男たちの鍔音、体重を左から右へ移動させる時に軋む床板の音、全てがやけに大きく耳障りに感じられた。身動ぎ一つ許されぬような張り詰めた空気の中、時間の感覚が鈍っていくような長い長い沈黙の中で、じっとその時を待った。そのことにも気付かず、男たちはこちらが怖気づいたものと見て既に勝利を確信している。そうだ、それでいい、そうやって慢心していればいい。その時を待って捲簾が深く息を吐いた瞬間、表玄関の方から男の悲鳴が響いた。その仲間の声に怯んだ男たちが集中力を失うのを見て、柄を握る手に力を込める。
「――――――……ならば押し通るまでだァ!!」
一番前に立っていた男が情けない悲鳴を上げるのにも容赦せず斬りかかり、横から斬りかかって来る男の脇腹を軍靴で思い切り蹴り飛ばす。吹き飛んだ男の身体は廊下の壁に叩き付けられ、そのまま力なくずり落ちた。先程までの自信振りはどこへいったのか、怖気づいた他の男たちは、血溜まりに落ちた仲間と壁に叩き付けられ失神している仲間を見て怖気づいている。その程度でそんなに怯え切ってしまう者に、人を傷付ける刀を持つ資格はない。
「掛かって来られぬ者は、退いてくれ」
そう言うと、暫く間合いを取っていた一人の男が自棄になったように、隙だらけの型で訳の分からないことを叫びながら斬りかかって来た。それを片手でいなし腹に刀の柄を突き立て、壁の横で気を失っている男の上に投げ飛ばした。他の男たちが放心状態で、襲い掛かって来ないことを確認した捲簾は、そのまま長い廊下を玄関へ向かって直走った。肩に担いだ小さな身体が震えているのに気付かぬはずはなかった。
長い廊下を走り抜け、最後の角を曲がれば、見慣れた軍服を纏った男たちが館の者と揉み合っているさなかだった。その中に見知った顔を見つける。捲簾が最初に配属されていた部隊で一期後輩だった珪鵬だった。彼に会うのももう何年振りになるだろう。しかし旧友と交流を温める間もなく、捲簾に気付いた彼は、刀を合わせていた男を蹴り飛ばしてから声を上げた。
「大尉! ここはお任せ下さい、早く坊やを連れて外へ! 部下が馬屋まで同行します!」
「悪い! 今度酒の一杯でも」
「期待してます!」
そう短い会話を交わして、玄関を出る。大通りに町の者の姿は見られなかった。きっと話がもう伝わっていて、外に出ないよう注意がされているのだ。そうしている間にも、包囲から逃れた者がどうにか捲簾の足止めをしようと斬りかかって来る。塀の上からは弓矢で狙われていた。飛距離はそう長くない種類だと推測したものの、早くここから逃げなければならないことに変わりはない。
「捲簾大尉、馬屋まで先導します!」
二人の下士官がそう言うのに頷く間もなく走り出す。肩越しに弓矢が地面に突き刺さるのを避けながら、一心に馬屋を目指した。下士官たちに援護されつつ馬屋の近くまで走っていくと、その前で青毛の馬と共に、見慣れた真ん丸い影が立ち尽くしているのに気付いた。それを見て弾かれたように捲簾は声を荒げる。しかし彼はいつもの笑顔を浮かべたまま動じることはなかった。
「邑慶、何をしてる! すぐに奴らが来る、早く家に隠れろ!」
「うん、分かってる。こいつは瑯、気性は少し荒いがうちの中では脚は一等速いよ。それとこれ食料。これで二日は持つだろ」
文句を言っている暇はない、とまず天蓬を一旦地面に下ろして馬に飛び乗る。そして天蓬を邑慶に持ち上げて貰う。それと同時に食料の袋を受け取った。その時にはらりと、天蓬が頭に被っていた血に濡れた外套が肩に落ち、その時初めて彼の顔色が真っ青になっていたことに気が付いた。頬にはいつついたのか、血飛沫が付いている。華奢な身体を震わせる青い顔をした少年は見ていて胸が痛むほどだったが今は慰めている時間もなかった。初めて経験することばかりで全てを飲み込み切れず、動転したように揺れていた眸は、馬の下でこちらを見上げている男を捉えて苦しげに歪められた。
「ユウさん」
「天蓬、元気でなァ。元気でいりゃアいつかどこかで会えるさ」
ぱたぱたとその眸から涙が散る。捲簾は掛ける言葉を持たない。
「そう泣きなさんな、今生の別れじゃないんだ」
彼は笑うと目が猫のように細くなる。我が子を見守るような表情で天蓬を見上げていた邑慶はその目を次に捲簾の方へと向けて、静かな眼差しで押し殺すような低い声で言った。
「頼む」
その彼の言葉尻を奪うように、男たちの叫び声が響き、喧しい足音が近くなって来る。応援部隊が突破されたのだ。すぐに第二部隊が到着するだろうが、今すぐここを出発しなければ身が危ない。別れを惜しむ時間は終わりだ。右手で手綱を手繰り、握る力を込めて、左腕で頼りなく揺れる少年の肩を支える。
「……約束する。間違いなくもう一度こいつを連れて会いに来よう。それまで、精々生きててくれ」
そう言い切るが早いか強く手綱を引くと、一声大きく嘶いた青馬は風を割くように走り出す。何か言いたげに口を開いた天蓬はそれ以上何を言うこともなく捲簾の身体にしがみ付いて顔を隠すように押し付けた。片手でその背中を支えつつ、最後に町を一度振り返る。道の真ん中に立つ友人の姿を目の端に収め、再び顔を正面へと向ける。そして小さな身体を抱く左腕に力を込めた。そしてその頭に口を寄せて言い聞かせるように告げる。
「大丈夫、生きていれば、何でもなるようになる」
「生きていたって、どうにもならないことだってあるじゃないですかァ!!」
そう叫んで天蓬は顔を上げた。感情の起伏がほんの僅かしかなかった少年が、涙で顔をぐしゃぐしゃにして今まで堪え続けて来たものを吐き出すように続け様に叫ぶのを、胸が潰されるような思いで聞いた。
「今までだってずっとずっと生きていれば記憶が戻る、本当の僕を知ってる人に会えると思って生きてきたのにどうにもならなかった!」
そう天蓬が叫んだ途端、頬を後ろから鋭い熱が通り過ぎた。驚いたように正面の天蓬の目が見開かれ、頬を流れる液体の感覚に、頬に傷が付いたのだと気付いた。じんじんとひり付くような痛みを感じながらそっと背後を窺うと、弓矢を構えた集団が次々と馬に乗って追いかけてくるのが見えた。馬に怪我を負わされたらそこで終わりだ。鞭を入れると高く嘶いた馬は一層速度を上げる。天蓬が振り落とされぬよう、背後から襲い来る矢に当たらぬようにその小さな身体を抱え込んで、姿勢を低くする。僅かに振り返って見れば、自分たちがつい一秒前にいた場所へ次々と矢が突き刺さっていく。その距離は徐々に広がっていく。
顔を前に向けて、じっと押し黙り捲簾にしがみ付いてくる子供を見下ろした。
「死より生きることを選ぶ方が辛い時もあるだろうし、お前は今までそうしてきたんだろう。だけどそれは普通じゃないんだ、今までお前が普通だと思ってきた生活は違うんだよ」
「違うって……」
「あんな風に服従させられて働かせられるのも、男に犯されるのも、失神するまで鞭で打たれるのも、全部違うんだ。そんな誤解したままで生きる意味がないなんて言っちゃだめなんだ。ここまで頑張って、こんなところで生きるの止めるなんて馬鹿なこと言うんじゃねえ!」
呆然とした目で捲簾を見上げていた一対の眸は、最後に一粒だけ雫を零した。血飛沫で汚れた白い頬を雫が伝い、顎の先からぽたりと落ちた。頬は血に涙に汚れ、目は充血して赤くなっているのに、それでも少年は美しくあった。
「もし生きてどうにもならなかったら、俺がお前に意味を与えてやる。絶対にだ」
頼りなく揺れる身体の振動を殺すためにきつく抱き寄せ、目の前の柵を越える。着地すると同時に飛び越えたばかりの柵に矢が突き刺さる音が続け様に何度か聞こえた。ここを越えれば当分追っ手は追い付けまい。
平坦な道に戻っても、しがみ付いたままの天蓬はそのまま動かない。何か声を掛けようとして、そのまま口を閉じた。少年が大人になろうとする、その邪魔をしてはならない。彼の心には彼の葛藤があり、それはとても自分では受け止め切れないものである。そしてそれを受け止められなければ彼は少年からの脱却が出来ないのだ。
彼に触れるのはその身体を支えるための肩だけにして、深く息を吐いた。すると後ろに向かって白い息が細く伸びてゆく。それを視線で辿って、今まで辿ってきた道を振り返った。振り返った町が穏やかな朝日に包まれていく様子が見えた。町が今、眠りから覚める。
まるで長い長い夢の痕のように思えた。あの夜の競も、不思議な館も、全て夢の産物なのではないかと思えてしまうほどに、穏やかな朝だった。前を向いて、もう一度振り返ればその先にあるのはただの草原なのではないかとも思ってしまう。抱きしめている温度は、氷のように凍て付くのではないかと思ってしまう。捲簾は顔を前に戻した。そして、天蓬の身体を支える手に少しだけ力を込めて、その熱を確認した。間違いなく彼はここにいる。
手綱を握り直し、一路中央へ向かって馬を走らせる。二度と振り返ることはしなかった。
(「唄を忘れたカナリヤ」西條八十「砂金」より)
世界観はあまり考えないのがいい。捲簾モテ放題、でも彼を狙ってるのはみんなネコ。そんな捲簾ですが天蓬以外では女専です。
天蓬の歌う唄にはモデルがあります。調べてみたらもう絶版でした。 2007/10/06
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